ページトップへ
開発ヒストリー

超伝導加速空洞

表面処理技術でノーベル賞を狙う。
素粒子物理学や超伝導加速器という最先端科学とめっきとの間に
関わりがあることを知る人は殆どいないだろう。
しかし、そんな最先端を支えているのが野村鍍金の面白いところだ。

超伝導加速空洞

トリスタン計画で超伝導加速器の量産化に成功

トリスタン計画で超伝導加速器の量産化に成功
昭和50年代初頭、日本における次期大型加速器計画「トリスタン計画」が持ち上がった。 「トリスタン計画」は素粒子物理学実験により、新しい粒子や現象を発見すること、特にトップクォークを発見することが期待されていた。 その根幹を担うのは当時世界最高性能のビームエネルギーを持つ電子陽電子衝突型加速器の建造である。 この300億電子ボルト(30GeV)という世界最高のエネルギーを達成するために、世界で初めての試みとして超伝導加速空洞を4つある加速ラインのうち1つに使用することが決定されたのだった。
この超伝導加速空洞に対する野村鍍金への要求は主に空洞内面の清浄度と平滑性に対するものであった。 野村鍍金は文部省高エネルギー物理学研究所(現 高エネルギー加速器研究機構 : KEK)と共同で、 超伝導材料であるニオブで形成された加速器の内面を清浄化するために電解研磨という表面処理手法の技術確立を行ったのである。
これにより、完成した超伝導加速空洞の最高加速電界は最終的に従来までの2倍以上の性能を発揮し、世界初の大型超伝導加速空洞システムとして現在でも海外から高い評価を得ている。
この取り組みによって、野村鍍金は、世界が注目するビッグ国家プロジェクトの完成にいささかなりとも貢献できたのではないかと自負している。

ノーベル賞の受賞に貢献

超伝導加速器
平成6年よりCP対称性の破れについて提唱された「小林・益川理論」を実証するため、KEKB加速器の建造が開始されることになった。 このKEKB加速器の建造には野村鍍金も「トリスタン計画」により確立した加速空洞の内面研磨技術をさらに高めて参加することになる。

KEKB加速器建造における野村鍍金に与えられた課題は32台の常伝導加速空洞の製作及び内面研磨とニオブ製超伝導加速空洞の電解研磨だった。 ここでも野村鍍金はこの課題をクリアし、より清浄度と平滑性の高い加速空洞内面を実現した。
野村鍍金の電解研磨技術が使用された、このKEKB加速器は衝突型加速器として世界最高性能の記録を持ち、 この加速器で実施されたBファクトリー実験において大きなCP対称性の破れを観測することに成功したのである。
この実験によってCP対称性の破れを証明したことにより平成20年に小林・益川両氏はノーベル物理学賞を受賞した。 野村鍍金は加速空洞の表面処理技術によってノーベル賞の受賞にも大きく貢献したのだ。

その時、技術者たちは

エンジニア プロフィール

Engineer Profile
Name : 仲井 啓治
University Graduation :
広島大学理学部化学科

こういった学術的なプロジェクトへの参画は、企業として大きな財産になることが多いですね。利潤の追求よりも、技術の追求です。 今回の場合にも、プロジェクトが進むうちに、野村鍍金という企業の姿勢が明らかになっていきました。 企業として、ただ利潤を追求するだけでなく、科学技術にも積極的に貢献していこうという姿勢があるからこそ、野村鍍金での仕事はおもしろいのだと思います。
私個人としては世界的にも通用する学術研究の場にいることが出来ただけでも、かなり興奮する出来事でしたね(笑)。 数多くの研究者の方が意見を戦わせている。そこに自分たちは技術力で多少なりとも貢献している。その事実がとても重要なのです。

H-IIロケットの主燃焼室開発ページはこちらから

複合表面処理技術開発ページはこちらから

開発ヒストリー トップページ